2017.02.09

実務で活かす労働法!社長、労働基準法を1から勉強しませんか?

第5回 労働基準法第9条(その2)


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経営者の皆様、こんにちは!弁護士の栗田 勇です。
さて、今回も、前回に引き続き、労働基準法の条文を一緒に勉強していきましょう!細かい部分に目が行きがちですが、まずは、基本をしっかり押さえることが重要です。経営者として、労働法を理解することは必須ですから、毎週10分、一緒に勉強 しましょうね!
今回は、前回の続きで、労働基準法第9条について実務的な争点を見ていきましょう。

(1)従業員兼務取締役
まず、法人等の代表者または業務執行機関たる者は、原則として、事業主体との関係において使用従属関係に立たないため、労働者ではありません。
ただし、株式会社における執行機関である取締役は、会社との関係では委任関係にありますが(会社法330条)、その取締役が業務執行外の業務を担当する工場長、部長の職にあって賃金を受ける場合は、この側面においては労基法上の労働者に該当すると解されています。そのため、従業員兼務取締役は従業員としての労働契約関係と役員としての委任契約の関係を併存させていると解されます(住建事件・長野地裁松本支部平成8年3月29日判決)。
この場合には、役員としての待遇と従業員としての法的保護をともに受けることになりますので、同人が退職する場合には、定款または株主総会決議により定める退職慰労金(会社法361条)と従業員退職金規程によって従業員としての地位にある者に支払われることになっている退職金をともに請求できることになります(前田製菓事件・最高裁昭和56年5月11日判決)。
なお、「執行役員」という立場は、規定上業務執行機関たる者ではなく、取締役会等の選任・指示の下で会社の業務執行の一部を担当する「使用人」であり、原則として会社との関係は雇用関係であると解されています。

(2)外勤勤務者・在宅勤務者
例えば、証券会社や保険会社において有価証券・保険商品の売買の媒介取次などの外務に従事する外務員、電力会社・ガス会社の検針員・集金員などの外勤労働者は、請負または委任契約を締結し、勤務形態は時間的場所的拘束性が低く、報酬も出来高制・歩合制で支払われることが多いため、労基法上の労働者にあたるかが実務上問題となります。
証券会社の外務員についての最高裁判決には、労働者性を否定するものがある(山崎証券事件・最高裁昭和36年5月25日判決)反面、委託集金・検針員については労働者性を肯定する裁判例があります(日本瓦斯事件・鹿児島地裁昭和48年8月8日判決、九州電力事件・福岡地裁小倉支部昭和50年2月25日判決)。
また、放送受信料の集金受託者については、労働者性を否定する裁判例があります(NHK事件・東京高裁平成15年8月27日判決)。
次回も引き続き第9条に関する実務的な争点について見ていくことにしましょう。

※ こちらのコラムは商工データ情報 第2264号(2015年3月6日号)に掲載されたものです。

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