2017.01.31
実務で活かす労働法!社長、労働基準法を1から勉強しませんか?
第4回 労働基準法第7条、第9条
経営者の皆様、こんにちは!弁護士の栗田 勇です。
みなさん、花粉症は大丈夫ですか?私はまだデビューしていないため、特に支障はありませんが、花粉症の方はちょっと大変そうですね。花粉症に負けないようにがんばっていきましょう!!
それでは、今回も、前回に引き続き、労働基準法の条文を一緒に勉強していきましょう!細かい部分に目が行きがちですが、まずは、基本をしっかり押さえることが重要です。経営者として、労働法を理解することは必須ですから、毎週10分、一緒に勉強しましょうね!
今回は、労働基準法第7条から見ていきましょう。
第7条(公民権行使の保障) 使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
ここでいう「公民としての権利」とは、例えば、最高裁判所裁判官の国民審査(憲法79条)、特別法の住民投票(憲法95条)、憲法改正の国民投票(憲法96条)、地方自治法に基づく住民の直接請求権、住民監査請求権などを指します。
あくまでも「公民としての権利」ですので、私法上の権利実現のための訴訟の提起などは、その目的が私的利益の追及にあるため、これには含まれません。
この規定が存在することから、例えば、使用者の承諾なくして公職に就任した場合は懲戒解雇する旨の就業規則の規定は無効であるとされています(十和田観光事件・最高裁昭和38年6月21日判決)。
なお、労働者に必要な時間を付与した場合、その時間に対応する賃金については、有給とすることまでは法律上義務づけられていません。したがって、その時間について無給としても違法ではありません。
次にいきます。第9条を見てみましょう(第8条は削除されており存在しません。)。
第9条(定義) この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下、「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
なんとも素っ気ない規定ですが、実務においては、この規定を巡り、激しく争われることがあります。なぜなら、この規定の「労働者」に該当しない場合には、労働基準法の適用を受けられないため、時間外労働をした際の未払残業代の請求などができなくなるからです。
また、ここから派生して、労災の適用の有無にも影響を与えます(労災法の労働者の定義は労基法の定義と同一であると解されています(横浜南労基署長(旭紙業)事件・最高裁平成8年11月28日判決)。)。
ちなみに、労働組合法上の「労働者」の定義は、労基法上の「労働者」の定義と異なりますので注意が必要です。
次回は第9条に関する実務的な争点について見ていくことにしましょう。
※ こちらのコラムは商工データ情報 第2263号(2015年2月27日号)に掲載されたものです。